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インシデントの振り返り方法としてポストモーテムを導入してみた

こんにちは。電通国際情報サービス(ISID) グループ経営ソリューション事業部の高崎です。

私が担当しているプロダクトの開発・運用中に発生した各種インシデントについて、解決後に再発防止を目的とした振り返りを実施しています。振り返りの方法として、ポストモーテムを導入してみました。 導入して3ヵ月が経過し、導入してよかったと思うことや今後の課題などが見えてきたので、紹介したいと思います。

後述するポストモーテムの内容は下記の書籍を参考にしています。

ポストモーテムとは

インシデントが発生したことによる影響、解決のために行ったアクション、発生した原因、再発防止策などを記録したドキュメントを指します。 ポストモーテムを作成する上で個人を非難してはいけません。ポストモーテムの目的は、誰がインシデントを引き起こしたのかを明らかにすることではなく、なぜインシデントが発生してしまったのかを組織としてはっきりとさせることです。 焦点は人ではなくプロセスと技術にあてられなければなりません。 また、完成したポストモーテムは記載されている教訓が役立つよう、可能な限り広い範囲に共有することが重要です。

ポストモーテムを導入したきっかけ

開発プロジェクトの体制は以下のようになっています。 PM配下に業務領域ごとの開発チーム、その開発チームを横断的に見ているTech Leadがいます。 ※私のポジションはTech Leadです

これまでインシデントが発生した場合、原因となった機能を担当している各開発チームごとに振り返りを実施し、再発防止策を作成していました。そうすると同じチーム内では再発しないのですが、振り返りの内容や再発防止策が他チームに浸透しておらず、同様の原因によるインシデントが他チームで発生するという課題がありました。 上記を解決するための方法を検討していた中で、ポストモーテムを導入してみようと思ったことがきっかけです。

どのようにしてポストモーテムを作成しているか

以下のフォーマットに沿って、関係者が各項目について対面で会話しながら作成しています。ファシリテーターはTech Leadが担当しています。

# インシデント名
## インシデント発生日
## 作成日
## 作者
## ステータス → インシデントの現在のステータス
## サマリ → インシデントの概要
## インパクト → インシデントによってどんな影響があったか
## 検出 → インシデントを検出した方法
## 対応 → インシデントを収束させるために実施したこと
## タイムライン → インシデント発生から復旧までのタイムラインを書く
## 教訓
### うまくいったこと
### うまくいかなかったこと
## 根本原因 → インシデントが発生した根本原因
## 発生要因 → 根本原因が発生した要因
## 再発防止策

特に重要な根本原因・発生要因・再発防止策については、マインドマップを使って深掘りを行っています。 まず根本原因(Where)が何かを突き止めます。次に根本原因となった事象がなぜ発生したのか(Why)を突き止め、最後に再発させないために何をするべきか(How)を決定します。

上記手順を踏まないと、根本原因や発生要因を明らかにしないまま、再発防止策ありきで話が進んでしまい、効果的な対策を打てない可能性があるため、注意が必要です。

問題解決の手段は下記の書籍を参考にしました。

ポストモーテムが作成できたら、可能な限り広い範囲に共有したいため、各開発チームのメンバー全員が集まっているデイリースクラムの中で内容の説明を行います。

導入してよかったこと

ポストモーテムを導入した目的である、同じ原因によるインシデントが他チームで発生するということは今のところ発生していません。また、しっかりと時間をかけて振り返りを行うことで、効果的な再発防止策を作成することができていると感じています。

今後の課題

実際にポストモーテムを作成してみて難しいなと思ったことなのですが、インシデントが発生した原因を突き止めるために、結局は特定のメンバーに当時の様子を細かくヒアリングする必要があります。ヒアリングするメンバーに心理的負担をかけてしまうと、本音を包み隠さず話すことができなくなってしまいます。 いかにメンバーに心理的負担をかけずに振り返りを実施できるかは、ファシリテーターである私にかかっているため、改善していきたいと思っています。

まとめ

まだ導入して3ヵ月しか経っていないため、今後もポストモーテムを実施する上で課題が出てくるかと思いますが、プロダクトを改善するためにどうすればよいかを軸に、改善を進めていきたいと思います。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆:@takasaki.keisuke、レビュー:Ishizawa Kento (@kent)Shodoで執筆されました